
「うどん県」として全国に知られる香川県。県内には約700軒ものうどん店が軒を連ね、その数はなんとコンビニエンスストアを上回るほどです。弘法大師・空海がうどんの製法を広めたとされる約1200年の歴史、小麦栽培に適した土地、良質なイリコ、瀬戸内の塩、小豆島の醤油。すべてがうどん作りに最適な条件が揃った讃岐の国で、極上のコシと喉越しを誇る讃岐うどんの真髄を味わい尽くす聖地巡礼の旅へ、ご案内いたします。
讃岐うどんとは - うどん県の誇る伝統の味
讃岐うどんの定義
讃岐うどんは、公正競争規約および公正競争規約施行規則によって厳格に定義されています:
技術的条件:
- 加水率:40%以上
- 食塩:うどん用小麦粉重量の3%以上
- 熟成時間:2時間以上
- 茹で時間:15分以内で十分アルファ化されること
品質特性:
- コシ:強靭で弾力に富む
- 食感:なめらかな舌触り
- 外観:透明感のある淡いクリーム色
讃岐うどんの歴史
約1200年前、弘法大師・空海が中国から持ち帰った製麺技術を讃岐国で広めたのが始まりとされています。讃岐地方は干ばつが多く、裏作として小麦栽培が発達。さらに品質の良いイリコ、製塩業、小豆島の醤油醸造など、うどん作りに必要な全ての条件が揃った「うどんの聖地」として発展しました。
うどん店の3つのタイプ
香川県のうどん店は独特のサービス形態で分類されます:
一般店タイプ:
- 通常のレストラン形式
- メニューを見て注文、テーブルまで運んでくれる
- 観光客にも親しみやすい
セルフタイプ:
- 学食スタイルで麺を受け取り自分でトッピング
- ダシやネギ、天かすなどを自分で盛り付け
- 讃岐うどんの醍醐味を体験できる
製麺所タイプ:
- 麺の卸業が本業、食堂は副業
- 最もセルフ度が高く、地元感満載
- 営業時間が短く(12-13時の1時間のみなど)
【讃岐うどん名店巡り】聖地で味わう極上の一杯
1. 山越うどん
ぶっかけうどん発祥の伝説的名店
- 住所:香川県綾歌郡綾川町羽床上602-2
- 営業時間:9:00-13:30
- 定休日:日曜・祝日・第1月曜
- 電話:087-878-0420
- アクセス:高松空港から車で15分
名物メニュー:
- ぶっかけうどん(冷):小250円、中300円、大350円
- ぶっかけうどん(温):小280円、中330円、大380円
- 釜たまうどん:小300円、中350円、大400円
特徴:ぶっかけうどんの元祖として名高い超人気店。太めの麺はしっかりとしたコシがあり、濃厚なダシとレモンでさっぱりといただく絶品。田園風景の中にある立地も魅力的で、外のテーブルで青空の下うどんを食べる体験は格別。
2. がもう
田園風景の中の製麺所系名店
- 住所:香川県坂出市加茂町420-1
- 営業時間:8:30-14:00頃(麺切れ次第終了)
- 定休日:日曜・月曜
- 電話:0877-48-0409
- アクセス:JR讃岐府中駅から車で10分
名物メニュー:
- かけうどん:小140円、大200円
- ぶっかけうどん:小170円、大230円
- ちくわ天:80円
特徴:田んぼと住宅に囲まれたのどかな環境の製麺所。注文方法がユニークで、入店後すぐに「温かい」か「冷たい」を選択。その後セルフで天ぷらやお揚げをトッピング。イリコの風味が効いたダシとコシの強い麺のバランスが絶妙。
3. 日の出製麺所
1時間だけの究極の製麺所体験
- 住所:香川県坂出市富士見町1丁目8-5
- 営業時間:11:30-12:30(食事のみ1時間)
- 定休日:日曜・祝日
- 電話:0877-46-3882
- アクセス:JR坂出駅から徒歩12分
メニュー:
- うどん:小160円、中220円、大270円
- 温かい・冷たい・ぬるい・釜玉から選択
- 薬味:ネギ、生姜、天かす無料
特徴:1930年創業の製麺所が朝2時から卸の仕込みを始め、出荷前の1時間だけうどんを提供。メニューは麺のみとシンプルながら、テーブル上の各種ダシと醤油から好みの味付けを選択。常連さんおすすめの「ぬるい」は小麦の味を最も感じられる究極の食べ方。
4. 手打十段 うどんバカ一代
高松駅周辺の人気店
- 住所:香川県高松市多賀町1丁目6-7
- 営業時間:6:00-18:45
- 定休日:無休
- 電話:087-862-4705
- アクセス:JR高松駅から車で8分
名物メニュー:
- 釜バターうどん:600円、大盛り700円
- 釜玉うどん:350円、大盛り450円
- 肉ぶっかけ(冷):650円
特徴:朝6時から営業する早朝営業が魅力。名物の「釜バターうどん」は黒胡椒とバターが効いた創作メニューで、讃岐うどんの新しい可能性を感じさせる一品。
5. 宮川製麺所
昔ながらの製法を守る老舗
- 住所:香川県善通寺市吉原町918-1
- 営業時間:9:00-14:00(売切れ次第終了)
- 定休日:火曜日
- 電話:0877-63-8191
- アクセス:JR善通寺駅から車で5分
名物メニュー:
- かけうどん:小200円、中250円、大300円
- ぶっかけうどん:小250円、中300円、大350円
特徴:1953年創業の老舗製麺所。瀬戸内のイリコが香る昔ながらのダシと、足踏み製法で作られるコシのある麺が自慢。手仕事特有の太さのばらつきがダシを絶妙に絡ませてくれると評判。
6. 池上製麺所
るみばあちゃんの愛で育まれた名店
- 住所:香川県高松市香川町川東下899-1
- 営業時間:9:00-13:00
- 定休日:日曜・祝日
- 電話:087-885-1110
- アクセス:高松空港から車で20分
名物メニュー:
- かけうどん:小200円、中250円、大300円
- ちくわ天:70円
特徴:名物女将「るみばあちゃん」で有名になった製麺所(2023年に逝去)。薄い昆布出汁がうどん本来の美味しさを引き立てる。看板商品のちくわ天は高コスパで人気。今でもるみばあちゃんのパネルが置かれ、その味は永遠に受け継がれています。
7. 本格手打うどん おか泉
ひや天おろしの名店
- 住所:香川県綾歌郡宇多津町浜三番丁53-16
- 営業時間:9:00-15:00
- 定休日:月曜日(祝日の場合翌日)
- 電話:0877-49-0338
- アクセス:JR宇多津駅から徒歩10分
名物メニュー:
- ひや天おろし:800円
- かけうどん:300円
- ぶっかけうどん:400円
特徴:客の大半が注文する看板メニュー「ひや天おろし」は、麺の柔らかさ、滑らかさ、しっかりとしたコシの3要素が極限で並び立つ逸品。天ぷらは専門店級の仕上がりで、讃岐うどん各種ランキングで常に上位の名店。
【うどん打ち体験】本場の技を学ぶ
1. 中野うどん学校 琴平校
うどんダンスで有名な体験教室
- 住所:香川県仲多度郡琴平町796番地
- 営業時間:9:00-15:00(体験時間)
- 体験料金:1,760円(税込)
- 所要時間:約50分(体験)+30分(食事)
- 電話:0877-75-0001
- 予約:要予約(当日予約可)
体験内容:
- 粉練り:小麦粉と塩水を混ぜて生地作り
- 足踏み:タンバリンのリズムに合わせて「うどんダンス」
- 伸ばし:麺棒で生地を薄く伸ばす
- 切り:包丁で麺状にカット
- 試食:自分で作ったうどんを実食
特徴:音楽に合わせてうどんを踏む「うどんダンス」で有名。卒業証書と秘伝帳、麺棒がもらえる楽しい体験プログラム。こんぴらさん参拝と合わせて観光できる立地も魅力。
2. 中野うどん学校 高松校
高松市内の便利な立地
- 住所:香川県高松市成合町8番地
- 営業時間:9:30-14:30(体験時間)
- 体験料金:1,760円(税込)
- 電話:087-885-3200
- アクセス:高松駅から車で20分
体験の流れ:
- 2-14名:1,760円
- 15-500名:1,650円(団体割引)
- 持ち帰り可能:オリジナルパッケージで持参可能
3. うどんの館 大庄屋
伝統的な手打ち技術を学ぶ
- 住所:香川県仲多度郡まんのう町吉野4243-12
- 体験料金:1,000円~
- 特徴:より本格的な手打ち技術を習得できる施設
【オリーブ体験】小豆島で日本のオリーブ発祥を学ぶ
1. 小豆島オリーブ園
日本のオリーブ栽培発祥の地
- 住所:香川県小豆郡小豆島町西村甲2171
- 営業時間:8:30-17:00
- 入場料:無料
- 電話:0879-82-2200
- アクセス:土庄港からバス25分「オリーブヶ丘」下車
見どころ:
- オリーブの原木:1917年から現存する日本最古のオリーブ
- 約2,000本のオリーブ畑:瀬戸内海を見下ろす絶景
- イサム・ノグチの遊具彫刻:芸術作品との融合
- レストラン:オリーブオイルを使ったパスタや丼
グルメ:
- ひしお丼:950円、小豆島の醤油とオリーブオイルの絶妙なコラボ
- オリーブソフトクリーム:350円
2. 道の駅 小豆島オリーブ公園
魔女の宅急便ロケ地
- 住所:香川県小豆郡小豆島町西村甲1941-1
- 営業時間:8:30-17:00
- 入場料:無料
- 特徴:ギリシャ風車、魔女の宅急便ロケセット、約2,000本のオリーブ畑
体験プログラム:
- マイオリーブオイルブレンド:2,200円(要予約)
- オリーブクラフト体験:1,000円~
- ハーブ石鹸作り:1,500円
3. 井上誠耕園
オリーブとみかんの農園
- 住所:香川県小豆郡小豆島町池田2352-3
- 営業時間:9:00-17:00
- 特徴:約5,000本のオリーブと14種類の柑橘を栽培
- 体験:オリーブ収穫体験(10-11月限定)
【うどん以外のグルメ】香川県の名物料理
1. 骨付鳥
香川のもう一つのソウルフード
一鶴 丸亀本店:
- 住所:香川県丸亀市浜町317
- 営業時間:11:00-22:00
- 名物:ひなどり(900円)、おやどり(900円)
- 特徴:スパイシーな味付けで県民に愛される郷土料理
2. 小豆島そうめん
手延べそうめんの名産地
なかぶ庵:
- 住所:香川県小豆郡小豆島町安田甲1385
- 営業時間:9:30-15:00
- 名物:生そうめん(950円)、釜揚げそうめん(850円)
3. 讃岐和三盆
上品な甘さの伝統菓子
ばいこう堂:
- 住所:香川県東かがわ市引田3丁目1-34
- 名物:和三盆各種(500円~)
- 体験:和三盆作り体験(1,500円)
【観光スポット】うどん巡りと合わせて楽しむ名所
1. 金刀比羅宮(こんぴらさん)
讃岐の名所785段の石段
- 住所:香川県仲多度郡琴平町892-1
- アクセス:JR琴平駅から徒歩20分
- 見どころ:本宮まで785段、奥社まで1,368段の石段
- 所要時間:本宮まで往復約1.5時間
2. 栗林公園
日本三大庭園の一つ
- 住所:香川県高松市栗林町1丁目20-16
- 開園時間:5:30-19:00(季節により変動)
- 入園料:大人410円、小中学生170円
- 特徴:約400年の歴史を持つ特別名勝
3. 瀬戸大橋
本州と四国を結ぶ雄大な橋
- 見学施設:瀬戸大橋記念館
- 展望スポット:与島パーキングエリア
- 体験:瀬戸大橋スカイツアー(要予約・有料)
4. 直島
現代アートの島
- アクセス:高松港からフェリー25分
- 見どころ:地中美術館、ベネッセハウス、草間彌生作品
- 日帰り観光:可能(フェリーは1時間に1-2本)
【宿泊】うどん県を満喫する拠点
1. JRホテルクレメント高松
高松駅直結の便利なホテル
- 住所:香川県高松市浜ノ町1-1
- 料金:12,000円~/泊(朝食付き)
- 電話:087-811-1111
- 特徴:高松駅直結、瀬戸内海の絶景、讃岐うどんレストラン併設
2. リーガホテルゼスト高松
高松市街地の上質ホテル
- 住所:香川県高松市古新町9-1
- 料金:8,000円~/泊
- 電話:087-822-3555
- 特徴:繁華街に近く、うどん店巡りに便利
3. 小豆島温泉リゾートホテルオリビアン小豆島
小豆島の自然リゾート
- 住所:香川県小豆郡土庄町屋形崎甲63-1
- 料金:15,000円~/泊(2食付き)
- 電話:0879-65-2311
- 特徴:エンジェルロード近く、温泉とプール完備
4. 琴平温泉こんぴら温泉郷
こんぴらさん参拝の拠点
琴参閣:
- 住所:香川県仲多度郡琴平町685-11
- 料金:20,000円~/泊(2食付き)
- 特徴:こんぴらさん参拝に便利、讃岐牛会席
【旅行プラン】讃岐うどん聖地巡礼 1泊2日モデルコース
1日目:高松エリア・うどん名店巡り
9:00 高松空港到着・レンタカー受取
10:00 手打十段 うどんバカ一代で釜バターうどん
11:30 栗林公園散策・庭園美を楽しむ
13:00 さか枝でぶっかけうどん
14:30 がもうで究極のかけうどん
16:00 池上製麺所でちくわ天うどん
17:30 高松市内ホテルにチェックイン
19:00 一鶴で骨付鳥ディナー
2日目:琴平・小豆島エリア
8:00 ホテルで朝食・チェックアウト
9:30 中野うどん学校でうどん打ち体験
11:00 こんぴらさん参拝(本宮まで)
13:00 宮川製麺所でかけうどん
14:30 高松港からフェリーで小豆島へ
16:00 小豆島オリーブ園見学・ひしお丼
17:30 土庄港からフェリーで高松へ
19:00 高松空港から帰路
【うどん巡りのコツ】成功させる秘訣
営業時間の注意点
- 午前中が勝負:人気店は13時頃に麺切れで終了することが多い
- 早朝営業:朝6時から営業する店も多数
- 定休日確認:月曜・日曜休みの店が多い
注文の作法
セルフ店での基本的な流れ:
- 麺の種類と温度を選択:「かけの小、温かい」など
- 麺を受け取り:トレーに乗せる
- トッピング選択:天ぷら、おでんなど
- ダシをかける:セルフでダシを注ぐ
- 薬味追加:ネギ、生姜、天かすなど
- 会計:食券制、後払いなど店により異なる
食べ歩きのポイント
- 少量ずつ:小サイズで複数店を回る
- 車必須:公共交通だけでは限界がある
- 「さぬきうどん全店制覇攻略本」:県内565店掲載の必携ガイド
- 地元の人に聞く:隠れた名店を教えてもらう
お土産うどんの選び方
- 乾麺:日持ちするが食感は劣る
- 半生麺:食感良いが日持ちしない
- 冷凍うどん:家庭で本格的な味を再現可能
- だしの素:イリコダシで本場の味
【交通アクセス】うどん県への行き方
飛行機
- 高松空港:東京から1時間20分、大阪から1時間
- 空港からのアクセス:リムジンバスで高松駅まで45分
新幹線+在来線
- 岡山駅経由:新幹線+マリンライナーで高松駅まで約1時間
- 本州四国連絡橋:瀬戸大橋経由で瀬戸内海の絶景
高速バス
- 東京から:約9時間、夜行バス利用
- 大阪から:約3時間、日中便多数
フェリー
- 神戸から:約4時間、船旅を楽しめる
- 小豆島経由:島の観光と合わせて
まとめ:うどん県で味わう究極の麺体験
香川県での讃岐うどん聖地巡礼は、単なるグルメ旅行を超えた、日本の食文化の真髄を体験する特別な旅となります。約1200年の歴史を持つ讃岐うどんは、弘法大師空海の時代から受け継がれてきた伝統の技と、讃岐の風土が生み出した奇跡の食べ物です。
製麺所の店主が早朝2時から仕込みを始める情熱、足踏み製法で生まれる究極のコシ、瀬戸内のイリコが奏でる上品なダシの旋律。これらすべてが合わさって、他では決して味わえない讃岐うどんの神髄が生まれています。
日の出製麺所での1時間限定の製麺所体験、がもうでの青空うどん、山越うどんでのぶっかけうどん発祥の味、中野うどん学校でのうどんダンス。どれも讃岐でしか体験できない、心に残る特別な思い出となるでしょう。
そして小豆島でのオリーブ体験、こんぴらさんでの785段の石段登り、瀬戸内海の島々をめぐるクルージング。讃岐うどんを軸にした旅は、香川県全体の魅力を発見する文化的な体験へと広がっていきます。
「一杯の究極のうどんとの出会いが、人生を変える」 - 多くのうどん巡礼者がそう語る香川県での体験。あなたもその感動を、ぜひうどん県で味わってください。本場の讃岐うどんが持つ無限の可能性と、うどんを愛する人々の温かさに触れる、一生忘れられない聖地巡礼の旅が待っています。