
四万温泉で歴史ある温泉文化を体験したいと思い、「千と千尋の神隠し」のモデルとしても有名な「積善館」を選びました。実際に宿泊してみて、元禄7年創業という300年以上の歴史と、群馬県重要文化財に指定された日本最古の木造湯宿建築の雰囲気に圧倒されました。特に有名映画のモデルになった「元禄の湯」での入浴は、まさに非日常の体験でした。歴史好きの方や、本格的な湯治体験をしたい方には特におすすめしたい名宿です。
四万温泉 積善館の基本情報
所在地: 群馬県吾妻郡中之条町四万甲4236
最寄り駅: JR吾妻線「中之条駅」から四万温泉行きバスで約40分
アクセス: 東京から車で約3時間、関越自動車道渋川伊香保ICから約60分
積善館は元禄7年(1694年)創業、300年以上の歴史を誇る四万温泉の老舗旅館です。本館は元禄4年に建てられ、現存する日本最古の木造湯宿建築と伝えられており、群馬県の重要文化財にも指定されています。本館・山荘・佳松亭の3つの建物から構成され、本館では昔ながらの湯治体験ができる湯治棟、山荘・佳松亭では総料理長自慢の懐石料理を楽しめる旅館棟として、旅のスタイルに合わせた滞在が可能です。
実際の宿泊体験レポート
チェックイン〜客室の印象
積善館本館に到着すると、まず朱塗りの「慶雲橋」から見る本館の風景に息を呑みました。まさにジブリ映画『千と千尋の神隠し』を彷彿とさせる幻想的な光景で、特に夕暮れ時のライトアップは格別でした。群馬県登録文化財指定の本館玄関は、歴史の重みを感じさせる重厚な造りです。
本館の客室は湯治棟として運営されており、昔ながらの湯治体験ができる素朴な和室でした。設備は最小限ですが、清潔に保たれており、歴史ある建物の雰囲気を存分に味わうことができます。Wi-Fiも利用でき、現代の利便性も確保されています。
館内は迷路のような複雑な構造になっており、散策するだけでも楽しめます。特に本館と旅館棟を繋ぐ「浪漫のトンネル」は、アニメのモデルの一つとしても有名で、歩いているだけでタイムスリップしたような感覚になりました。
有名映画モデル「元禄の湯」での温泉体験
積善館の最大の魅力は、昭和5年建造の「元禄の湯」です。アーチ型の窓が印象的な大正ロマンを感じる造りで、源泉100%かけ流しの贅沢な温泉を楽しむことができます。大きなアーチ窓から差し込む自然光の中での入浴は、まさに映画のワンシーンのような美しさでした。
四万温泉は「4万の病を治す」といわれる名湯で、毎分900リットルの豊富な湧出量を誇る無色透明のやわらかなお湯です。実際に入浴してみると、肌に優しい湯質で長時間浸かっていても疲れることがありません。飲泉も可能で、胃腸にも良いとされています。
元禄の湯以外にも「杜の湯」など複数の温泉があり、四季の移り変わりを感じながら湯めぐりを楽しむことができます。特に露天風呂からは四万の自然を眺めながら、ゆっくりとした時間を過ごすことができました。
湯治体験を楽しむ食事
本館湯治棟では、昔ながらの湯治体験として、お弁当形式の食事が提供されます。季節の野菜や山菜、群馬県産のこんにゃく、豆腐などの素材を活かした滋養のある料理で、体に優しい内容でした。特に上州麦豚こしね汁などの郷土料理も味わうことができ、群馬の食文化も体験できました。
食事は最小限の接客サービスで提供され、まさに昔の湯治場の雰囲気を再現しています。華やかさはありませんが、温泉と食事で心身を整えるという湯治本来の目的を実感できる内容でした。
一方、山荘・佳松亭では総料理長自慢の懐石料理を楽しむことができ、より本格的な旅館体験も選択可能です。旅のスタイルに合わせて選べるのが積善館の大きな魅力です。
300年の歴史が育んだ文化的価値
積善館では、300年以上の歴史を持つ温泉文化を肌で感じることができます。館内の至る所に歴史を物語る調度品や建築様式が残されており、日本の湯治文化の貴重な遺産を体験できます。
特に印象的だったのは、スタッフの皆さんが積善館の歴史や四万温泉の文化について詳しく説明してくれることでした。湯治の作法や温泉の効能について学ぶことができ、単なる観光ではない深い体験ができました。
2020年には慶雲橋の手前に薬膳料理店「薬膳や 向新」もオープンし、温泉と食事による体調管理という湯治の考え方がさらに充実しています。
周辺観光とアクセス情報
積善館は四万温泉街の中心部に位置しており、四万温泉の主要観光スポットへのアクセスは抜群です。四万川沿いの散策路では、清流の音を聞きながら自然を満喫できます。また、四万温泉は日本で最初の国民保養温泉に指定された温泉地で、泉質・自然環境ともに温泉保養にピッタリの地です。
車でお越しの場合は、奥四万湖や四万の甌穴群などの自然スポットも楽しめます。特に奥四万湖の美しいコバルトブルーの湖水は一見の価値があります。積善館には本館用と山荘・佳松亭用の駐車場が別々にあるため、事前に確認が必要です。
電車利用の場合は、中之条駅から関越交通の四万温泉行きバスで約40分、終点「四万温泉」下車徒歩1分で本館に到着できます。冬季期間には東京から四万温泉までの直行高速バス「四万温泉号」も運行されており、乗り換えなしでアクセス可能です。
歴史的建築宿泊時の注意点と持参すべきもの
積善館本館は300年以上前の建築のため、現代的な設備を期待される方には向かないかもしれません。湯治体験を目的とした宿泊では、豪華さよりも歴史と温泉の質を重視する心構えが大切です。
建物は木造で複雑な構造になっているため、館内での移動時は足元に注意が必要です。特に夜間は照明が控えめなため、懐中電灯があると便利です。また、階段が多いため、大きな荷物は最小限にすることをおすすめします。
四万温泉の泉質は比較的穏やかですが、長時間の入浴は避け、水分補給をこまめに行うことが大切です。また、歴史的建築物のため、写真撮影の際は他の宿泊客への配慮を忘れずに。
積善館は単なる温泉宿ではなく、日本の湯治文化を体験できる貴重な文化遺産でした。300年の歴史に培われた温泉文化と、映画の世界に迷い込んだような非日常体験を求める方には、心からおすすめしたい特別な宿です。